鳥居本へは、嵐山駅から北へ、常寂光寺〜落柿舎の前を通り、さがの人形の家をさらに北へ、あだしの念仏時あたりまで来ると人影もまばらになります。
嵐山高尾パークウエイの高架下を通るとすぐ赤い鳥居と茅葺茶屋「平野屋」が見えてきます。ここから駅まで僅か2km程ですが、観光客の多くは土産物店や寺社の多い駅周辺に集中しており鳥居本は嵐山に近いところではありますが、嵐山とは別の趣をもっております。
嵯峨野は、古くから詩人や歌人に愛され、文学の舞台として数多く登場します。平安時代には皇室関係の別荘が次々と建てられ、鷹狩りや桂川での舟遊びなどの遊興を楽しんだようです。
嵯峨野の西北に位置する鳥居本地区は、小倉百人一首ゆかりの小倉山と、五山送り火の「鳥居形」がともる蔓陀羅山の山あいを通る一筋の道“愛宕街道”沿いにあります。江戸中期、愛宕詣の門前町として賑わい、江戸時代末期から明治、大正にかけてこの愛宕街道沿いには、農家、町家のほかに、茶店なども建ち並ぶようになりました。嵯峨鳥居本のまちなみは、愛宕街道に沿って化野念仏寺を境にして、愛宕神社一之鳥居に近い上地区には、藁葺き屋根の農家風の民家が多く、茅葺き屋根の下には、町屋の千本格子や、太い米屋格子が見られます。
そして、一之鳥居のそばには、スケッチや写真愛好家のポイントとなっている大きな茅葺き民家があります。この地区に点在する茅葺き民家の典型で、古くから鮎茶屋として知られています。外観は片入母屋造かや葺き屋根で、遠望すると、入母屋の破風と一之鳥居、そして背後の緑が相互に引き立てあって、集落全体のアイ・ストップともなり独特の美しい景観を形成しています。嵐山高雄パークウエイの高架上から愛宕街道を見下ろす風景もお勧めです。下地区は、落柿舎から祇王寺にかけて、化野念仏寺に至る景観で、桟瓦葺きの屋根に虫龍窓、千本格子、駒寄せのある京都らしい町家が続きます。
垣根にも独特 の風情があり、 嵯峨野の景観を特徴づけています。 |